3/4-13 SHODO NEW WAVE

SHODO NEW WAVE

会期:2023 年 3 月 4 日(土)~3 月 13 日(月)

~参加アーティスト~
Ouma(オーマ)
岡淵静
KOUSAI
Kofu Hijikata
Saori Kunihiro
高濱渉
目時白珠
野口裕司

キュレーター:山本尚志

オープニング:2023 年 3 月 4 日(土)16:00~17:45

開館時間:10:00-18:00 (3 月 4 日は 15:00~18:00、3 月 13 日は 16:00 まで)

GARDE Gallery (東京都港区南青山 5-2-1 ALLIANCE ビル 4F)

入場無料

〜本展に寄せて〜
既にコマーシャルギャラリーから作品を発表し、プロデビューしている書道あるいは文字をモチーフとしたアーティストたちに、毎回新人を加え、常に新しく、そして個性豊かな、意欲に溢れる展覧会を目指す。年に数回を企画し、新しい言語アートとしての書道とは何か、その都度紹介する。美術手帖の展評、アートコレクターズでも特集された、新たな美術の一潮流としての「新たな書道=ART SHODO」を展観するのが目的。(これが新しい書なのか?)と、見る者はきっと驚くだろう。

山本尚志(書家・現代アーティスト、本展キュレーター)

〜アーティスト紹介〜

Oumaは、現代アーティストとして、山本尚志と同じウナックトウキョウからデビュー後、発表の場を海外に移し、世界各地にて現代アートの作品を発表。2020年ごろから、オノマトペを意識した言語アート的な作品を次々と発表。注目を集めている。アート書道の展覧会「SHODO NEW AGE」にもゲスト参加。現在、タグボート所属。精力的に作品を発表している。

岡淵静は、この世に生まれる文字の数々が、ごく細やかなものであることを、我々に伝えてくれるようである。心に届く声、そして世の中に伝わるはずの文字がここでは消えるか消えないかくらいの、そんな誤差によって導き出されているかのようだ。僧侶でもある彼女の祈りの声は、そんなふうに目の前に降り注ぐ。

Kofu Hijikataの作品は、何種類かの赤いパステルコンテで書かれている。書かれる文字が全て同じ赤ではない理由は、その言葉の性質と関係しており、作者の微妙な心情、意識の差異、そこから生じた出来事などを表している。書かれる言葉はその都度異なり、アクションにも変化が加わり、その文字群が示す「図形」は、毎回異なる。そこには同時に、常に流動的かつ微妙な意識の変化が表れているのだ。

KOUSAIは、一行詩を書く。それは、何気ない日常の一コマだったり、辛辣な一言だったりする。それは時にユーモラスであり、時に心に残る何かになっている。ヒトは言葉を発するときに「たった一言」から、いつもスタートする。その意味において、KOUSAIの作品は常に新鮮だ。それは新鮮な気分で発話することから、彼女の書が成立するからに他ならない。掛け軸を開いたときに目に飛び込むのは、作家の人生における一コマなのである。

新人のSaori Kunihiroは、円形のパネルに仮名文字の羅列が印象的な作品が特徴的な作家だ。そもそも古典の仮名には「ちらし書き」の概念があり、どこに文字が書かれるかは自由なのだが、彼女の場合は、意図的に、そして、時に偶然に書きつけられる。それは、場が円形であるが故の仕業である。書かれる文字群は直線的な「行」の概念を予め離れ、それが故に、作品はさまざまなニュアンスを育み、変幻する。

高濱渉の書は、繰り返し書かれるとめどないアクションの連続体として、画面いっぱいに広がる。それはまるで、細胞分裂による増幅の様子のようだ。彼の書とはそんなふうに、生き生きとして見える。それは書としては理想的な成り立ちなのではないだろうか。そう思わせてくれるほどに、彼の愚直なまでの行為は、このままずっと続くに違いないのだ。

目時白珠の作品は、情報そのものだ。それは情報の中身ではなく、情報の輪郭を表すという意味で。それは「何も書いていない」社会風刺となっていて、そして何を風刺するのかも決まっていないのだが、新聞のドットのように書かれるその一つ一つを見ると、それがそのまま現代の書だとわかる。文字を書かずとも文字がそこにあることを、彼女の書は、雄弁に語っている。そんな不思議な作品である。

野口裕司は、書の映像作品を発表して数年経つ。コンペでは審査員からの評価も高く、映像作品自体がまだ根付いていないこの国のアートシーンに、書道から初の映像作家として、昨年デビューした。まだ目新しい彼の作品を見る機会は、だから、それだけで貴重なものなのである。作品は、やや拍子抜けなこともあるが、それは作家の個性と言えるだろう。今後注目されるアーティストの一人。