5/19-28 Saori Kunihiro個展「petal lines」光明院
新緑の季節に東福寺塔頭の光明院さんにて個展のお知らせです。開催にあたり、書家・現代アーティストの山本尚志氏にアーティスト紹介文を書いていただきました。また、期間中の5/20に光明院本堂にてトークイベントを行います。
個展開催は1年ほど前から準備して参りました。多くの皆様に、ご高覧いただけましたら幸いです。
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Saori Kunihiroは、可能性の塊だと思っている。
彼女に最初に会ったのは、同県出身ということもあり、広島市内だった。同じ書というジャンルで頑張っている同郷の人間を、応援しないわけにはいかない。そう思って、彼女の作品を見続けてきた。だが、アートの世界は厳しい。そこにアジャストできるまで、つまり、ある程度の質を備えた作家と認識されるまでの道のりはそれなりに険しいのだ。また、書というジャンルの地位の低さもまた、作家の後押しをしてくれないことも、彼女に自らへの厳しさを与えてくれたはずである。そんな中で、Kunihiroは日々制作を続けている。
代表作の円形の仮名のシリーズの一つ「petal lines」は、かつて正方形だった平安期の「色紙」の全く新たな姿だと想起させられる。つまり、荒唐無稽でありつつも、作品として成立する、その可能性を見出したことにこそ、意味があると思っている。可能性の欠片があれば、グイグイ突き進む、そんな彼女の姿を見ているよう。
墨線を立体化させるシリーズ「ridge’s lines」は、我々書家の動きのイメージをそのまま浮遊させる試みだが、これには驚いた。空中をただ漂うだけのオブジェに、彼女自身が価値を見出せることに。つまり、これは書になる直前の、単なる墨線を模したものであり、なんの変哲もない、ただの質量と言える。けれど、よく考えてみると、書とはそもそもそうしたものの集合である。真っ白な屏風を背景に、それらは紙から離れ、一時の休息を与えられているかのようだ。
変わり掛軸のシリーズ「frame of self」は、あえて文字を入れていない。つまり、これは書とは言えない。しかし、それでも彼女はそれを止める気配がない。つまり、書かなくとも、その周縁である軸に、表現の可能性を見出したのだ。既に生活の用から離れ、失われていく古来の文化は、それを守ろうとする職人の思いとともに常にある。掛軸の新たな可能性もここにこそあるのだ。
最後に、三十六歌仙絵巻を縦作品とした「36kasen」は、ジェンダーの世の中の風刺となっている。三十六歌仙のうち、女性の数は僅かに5人。まるで、日本のどこかの会社の女性管理職の割合に似たような構成であり、それこそが日本という世の中を示す風刺画となっている。Kunihiroのささやかなメッセージも、男性中心のアートの世界に果たして刺さっていくのだろうか。この一つの可能性を、私は今後も注視し、応援したい。
山本尚志(書家・現代アーティスト)
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会期 5/19-28場所 光明院(東福寺塔頭)
京都市東山区本町15丁目809拝観時間
午前7時頃〜日没頃
拝観料 300円
https://komyoin.jp/@komyoin
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トークイベント
日時 5/20(土)14:00〜(1時間程想定)
場所 光明院 本堂
ゲスト 山本尚志氏(書家・現代アーティスト)@zealhisao
藤田慶水氏(光明院住職) @komyoin
國廣沙織
※予約不要
※トークイベントは無料ですが、拝観料300円を入り口にてお納めください
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個展期間中、特別御朱印を頒布(限定200部)
作家在廊予定日 5/19・20・21・27・28(時間不定)
事前にお知らせいただきましたら他の日でもなるべく居るようにしますので、お気軽にご連絡ください。
#光明院#saorikunihiro